狂犬病について
考えてみよう
〜大切な愛犬・飼い主の皆さま・
社会のために〜
監修:岐阜大学名誉教授 源 宣之 先生

狂犬病について
考えてみよう
〜大切な愛犬・飼い主の皆さま・
社会のために〜
監修:岐阜大学名誉教授 源 宣之 先生
「狂犬病」ご存知ですか?
「狂犬病」は、一旦発症してしまうと人・動物共にほぼ100%死亡する大変恐ろしい病気です
狂犬病ってどんな病気?
狂犬病には「潜伏期間が長い」「一旦発症すると有効な治療法がなく死亡率が100%」という特徴があります。このため、咬まれた後しばらくは何事もなかったかのように生活できても、“気付いた時には手遅れ”になってしまう大変恐ろしい病気です。
感染経路 | 病原体は感染動物の唾液中に含まれ、主に咬まれることで伝染 |
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主な症状 | 異常行動・けいれん・麻痺 など |
潜伏期間 | 長い(犬では平均1~2か月間、人では1~3か月間) |
治療方法 | 有効な治療法はなく、死亡率は犬・人共にほぼ100% |

人の狂犬病を防ぐには、
“動物に咬まれないようにする”
“万が一咬まれたらすぐに狂犬病対策を始める”
ことが重要です。
日本では発生しない?
昭和25年に狂犬病予防法が制定され、犬の登録とワクチン注射の徹底・放浪犬の捕獲によって、国内では昭和33年以降、人にも動物にも発生していません。
とはいえ、“今後も日本では発生しない”と言えるのでしょうか?

出典 : 厚生労働省ホームページ, 狂犬病, (http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/)

上の図は、狂犬病ウイルスを運ぶ動物を表した世界地図です。
人が狂犬病にかかる場合、直接の感染源となる動物の99%は犬ですが、犬以外の動物でも、咬まれると感染する恐れがあります。
(このため、海外では可愛いからといって見知らぬ動物にむやみに近づかないことが大切です)
日本では数種類の動物に対し、動物検疫が行われています※が検疫対象外の動物や、貨物への動物の潜入、不正輸入による持ち込みの危険性が指摘されています。
人・動物の行き来が国際化した現在では、狂犬病の進入の恐れは増大しており、“今後も日本では発生しない”とは言いきれません。
※動物検疫:2022年2月現在、国内では犬・猫・きつね・あらいぐま・スカンクを検疫の対象とし、狂犬病の検査をしています

実際に、2006年にフィリピンで犬に咬まれて帰国した2人の日本人が亡くなった例があるんだ。
最近では、2020年にフィリピンで犬に咬まれて来日した外国人が1人亡くなっているよ。
海外では毎年アジア・アフリカを中心におよそ55,000人が狂犬病で亡くなっていて、狂犬病はまだまだ撲滅できていない病気なんだ。
日本のワクチン注射率70%? 50%?
世界保健機関(WHO)は「狂犬病の流行を阻止するにはワクチン注射率は70%以上必要」としています。日本は、この70%を上回っているのでしょうか?
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- 犬の登録頭数
6,090,244頭 - ワクチン注射率(1)
70.2%
- 犬の登録頭数
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- 犬の推定
飼育頭数(2)
8,489,000頭 - ワクチン注射率
50.4%
- 犬の推定
(1) 厚生労働省ホームページ, 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和2年度)より
(2) 一般社団法人 ペットフード協会ホームページ, 2020年(令和2年)全国犬猫飼育実態調査 結果より
このように、実際には登録頭数以上の犬が飼育されていると推定されています。推定飼育頭数から見た注射率では、目標の70%を大きく下回っていると考えられ、安心できる状況とは言えません。

この70%は、あくまで“流行阻止の最低目標”なので、注射していないワンちゃんは感染する恐れがあるんだ。
感染の恐れを完全になくすには、そのワンちゃんにワクチンを注射してあげることが重要になるよ。
狂犬病ワクチンを注射しましょう!
現在使われているワクチンは、狂犬病の予防に極めて有効です。ワクチンを注射することで、感染の恐れをなくし、近隣住民の方々の不安もなくすことができます。 ワンちゃん、飼い主の皆さま、そして社会のために、年に1回、忘れずに注射してあげてください
犬の登録と狂犬病予防注射
犬の飼い主には、
- 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
- 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
- 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
が法律により義務付けられています。
ワクチンを注射した後は・・・
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2~3日間は、激しい運動、交配、入浴(シャンプー)などは避けて、なるべく安静にさせてください。
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過敏な体質のワンちゃんでは、まれに元気や食欲がなくなる、下痢や嘔吐を起こす、顔がむくむ等の症状がみられることがあります。少しでも様子がおかしい場合には、すぐに動物病院を受診してください。