浮腫病について
About Edema disease
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浮腫病
浮腫病は主に離乳した子豚に発生しますが、その後の生産段階でも発生することがあります。この病気は散発的に起こりますが、時に豚群全体で発症し、長期化することもあります。特に、飼料を変更したり、何らかのストレスがかかると発症しやすくなります。
1
急性の場合
主に臨床症状を示すことなく突然死します。食欲不振・眼瞼や前頭部の浮腫・神経症状等を伴って死亡することもあります。死亡を免れる豚もいますが、それらの豚の大半は成長不良となります。
2
慢性の場合
急性の死亡を免れた豚が回復しないときに起こります。成長不良や片側性の神経症状を呈しますが、皮下の浮腫はほとんど見られません。
3
不顕性の場合
臨床症状は示しませんが、血管に損傷が見られます。それにより、増体が低下することがあります。
大腸菌
大腸菌は腸内細菌科に属する細菌です。腸内の非病原性大腸菌は、生理的な腸内環境の維持に関与します。しかし病原性を持つ大腸菌も存在し、浮腫病、下痢など疾病を引き起こす可能性があります。
志賀毒素(Stx)
志賀毒素(Stx)はサブユニットAとサブユニットBで構成されるホロ毒素で、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)のほか赤痢菌(Shigella dysenteriae)からも産生されます。
Stxはベロ毒素と呼ばれることもあります。

Stxは2つのグループ(Stx1とStx2)に分類され、さらにそれらの中に複数のバリアントが存在し、それぞれの毒性や感受性動物などの性状が異なります。
このうち、Stx2のバリアントのひとつであるStx2eが、豚の浮腫病を引き起こします。
発症機序
浮腫病は、STECを経口的に取り込むことから始まります。
小腸へ到達したSTECは、線毛媒介性に腸管へ付着し、Stx2eを放出します。
腸管で吸収されたStx2eは血中に移行し、標的細胞のある毛細血管へ到達します。

Stx2eは、サブユニットAとサブユニットBで構成されています。
はじめにサブユニットBが標的細胞の表面にある特定の糖脂質に結合し、続いてサブユニットAが細胞内に侵入します。
その後、細胞内のサブユニットAがリボソームに結合し、タンパクの合成を阻害することで標的細胞を損傷させます。
標的細胞の浸透圧調整機構が破綻し、体液が漏出することで、豚は種々の症状を発症します。