有効性と安全性
※文章中、[ ]内の参考文献については、参考文献よりご確認ください。
アルファキサン®︎ マルチドーズは、アルファキサン®︎との生物学的同等性が確認されています。以下では、アルファキサン®︎の投与データを示します。
有効性[26]
アルファキサン®の「犬及び猫における吸入麻酔薬による全身麻酔時の麻酔導入」における有効性を評価することを目的とした試験を実施しました。
試験材料及び方法
1.被験薬
アルファキサロン10mg/mL(10mL バイアル)
2.供試動物
外科手術等のために全身麻酔を要し、ASAの分類でクラスⅠ~Ⅲに属している犬及び猫を供試しました。ただし、1か月以内に全身麻酔を施された動物、および妊娠又授乳中の動物は除外しました。
3.麻酔方法
被験薬で導入を行った後、手術中は吸入麻酔薬により維持しました。麻酔前投与薬及び維持麻酔薬は、治験実施機関の慣行に従いました。
麻酔前投与薬を投与した後、アルファキサロンとして犬では2~3mg/kg、猫では5mg/kgを静脈内投与しました。投与に際し、動物の状態(体型、年齢、全身状態等)を考慮の上、喉頭反射を確認しながら規定範囲内で適宜増減し、60秒かけてゆっくりと使用しました。上記用量を投与しても十分な麻酔深度に達しない場合は、再度、同用量を投与しました。ただし、犬では2mg/kg、猫では5mg/kgに満たない投与量でも、麻酔導入が完了と判断される時点で、投与を終了しました。
4. 併用薬及び併用禁止薬
原則として、麻酔前投与薬及び吸入麻酔薬以外の併用薬は使用しません。ただし、以下の薬剤の使用は可としました。また被験薬以外の麻酔導入薬は併用禁止としました。
・鎮痛剤(術前、術後)
・術後感染防止のために使用する抗菌剤(術後)
・手術部位に用いる外用消毒剤(術前)
・止血剤(術前、術中、術後)
・補液剤(術中、術後)
・その他、併発症治療のために使用する薬剤
5. 症例の終了基準
有効性に関する検査・観察は、麻酔導入完了時までとしました。
6. 麻酔前投与薬と吸入麻酔薬の使用状況
項目 犬(n=69) 猫(n=73)
抗コリン薬 使用なし 19 27.5% 16 21.9%
アトロピン 50 72.5% 57 78.1%
鎮静薬 使用なし 43 62.3% 41 56.2%
アセプロマジン 3 4.3% 8 11.0%
ミダゾラム 23 33.0% 23 31.5%
メデトミジン 0 0.0% 1 1.4%
鎮痛薬 使用なし 17 24.6% 25 34.2%
フェンタニル 31 44.9% 7 9.6%
モルヒネ 1 1.4% 0 0.0%
ブトルファノール 12 17.4% 27 37.0%
メロキシカム 8 11.6% 0 0.0%
フェンタニルメロキシカム 0 0.0% 2 2.7%
ブトルファノールメロキシカム 0 0.0% 12 16.4%
吸入麻酔薬 イソフルラン 51 73.9% 66 90.4%
セボフルラン 14 20.3% 7 9.6%
セボフルラン/イソフルラン 3 4.3% 0 0.0%
セボフルラン/笑気 1 1.4% 0 0.0%
項目 犬(n=69)
抗コリン薬 使用なし 19 27.5%
アトロピン 50 72.5%
鎮静薬 使用なし 43 62.3%
アセプロマジン 3 4.3%
ミダゾラム 23 33.0%
メデトミジン 0 0.0%
鎮痛薬 使用なし 17 24.6%
フェンタニル 31 44.9%
モルヒネ 1 1.4%
ブトルファノール 12 17.4%
メロキシカム 8 11.6%
フェンタニルメロキシカム 0 0.0%
ブトルファノールメロキシカム 0 0.0%
吸入麻酔薬 イソフルラン 51 73.9%
セボフルラン 14 20.3%
セボフルラン/イソフルラン 3 4.3%
セボフルラン/笑気 1 1.4%
項目 猫(n=73)
抗コリン薬 使用なし 16 21.9%
アトロピン 57 78.1%
鎮静薬 使用なし 41 56.2%
アセプロマジン 8 11.0%
ミダゾラム 23 31.5%
メデトミジン 1 1.4%
鎮痛薬 使用なし 25 34.2%
フェンタニル 7 9.6%
モルヒネ 0 0.0%
ブトルファノール 27 37.0%
メロキシカム 0 0.0%
フェンタニルメロキシカム 2 2.7%
ブトルファノールメロキシカム 12 16.4%
吸入麻酔薬 イソフルラン 66 90.4%
セボフルラン 7 9.6%
セボフルラン/イソフルラン 0 0.0%
セボフルラン/笑気 0 0.0%
導入中の体動について
スコア 犬(n=69) 猫(n=73)
体動の程度 0:体動はみられない 47(68.1%) 48(65.8%)
1:極僅かな体動がみられる 18(26.1%) 19(26.0%)
2:明らかな体動がみられるが、
物理的な保定を要しない
4(5.8%) 4(5.5%)
3:重度の体動、興奮がみられ、
物理的な保定を要する
0(0.0%) 2(2.7%)
導入時間及び眼瞼反射消失時間
犬では69症例中全例で麻酔導入が成立し、有効率は100%でした。8症例(11.6%)で眼瞼反射の消失が見られず、算出から除外しました1)。また眼瞼反射の消失が著しく遅延した症例もあり、これは吸入麻酔剤による可能性も考えられました。
猫では73症例中全例で麻酔導入が成立し、有効率は100%でした。8症例(11.1%)で眼瞼反射の消失が見られず、また1症例(1.4%)では眼瞼反射の測定が行われなかったため算出から除外しました2)
項目
導入時間(秒) 検査数 69 73
範 囲 48~280 25~633
平均±SD 118±51 120±109
眼瞼反射消失時間(秒) 検査数 611) 642)
範 囲 29~2,040 0~600
平均±SD 254±385 128±124
導入の容易さについて
安全性
犬での安全性
  • 犬でのアルファキサン®単回高用量投与試験で、常用量(2mg/kg)の10倍量(20mg/kg)までの安全性を調査したところ、高用量投与で起きた不測の事象に対しても、呼吸補助(人工呼吸及び酸素供給)のみの措置で回復したと報告されています[5]。
  • 犬に対して高用量(常用量の5倍)のアルファキサン®を2日間隔で3回反復投与したところ、副作用は認められませんでした[6]。
  • アルファキサン®は、6週齢以上の子犬に使用された報告がありますが[7]、幼若動物に対する安全性は確立されていません。
  • アルファキサン®は、常用量をサイトハウンド(グレイハウンド)に投与した場合、他の犬種(ビーグル犬)と同様に使用できたことが報告されています[8]。
  • アルファキサン®は、犬の帝王切開時の麻酔導入に使用できたと報告されています[9]。しかし、胎子への安全性は確立されていませんので、使用に際しては、そのリスクと有益性を評価する必要があります。
猫での安全性
  • 猫に対して高用量(常用量の5倍)のアルファキサン®を2日間隔で3回反復投与したところ、副作用は認められませんでした[10]。
  • アルファキサン®は、6週齢以上の子猫に使用された報告がありますが[11]、幼若動物に対する安全性は確立されていません。